* フェリックスはさやかの電話で眠れない夜を過ごした。 いつもどおり屋敷の書斎に入り、自分の席に付く。 物音がしたのに何気なく目をあげて、ぎょっとした。 「おはよう」 綺樹が互いの書斎の境目に立っていた。 言葉が出なかった。 「おまえ」 顔色はいつも白い。 だがくちびるまでもが、土気色を通り過ぎ、白みを帯びていた。 「なに?」 「病院はどうした」 綺樹は肩をすくめた。