さやかは能面のような綺樹の顔を見下ろす。 何か抜けてしまったように、輪郭がぼやけている。 「明日ぐらいまでは入院して安静にしていた方がいいそうよ」 「うん」 「また、来るわね」 さやかはそっと綺樹の腕に手を置いてから病室を出た。 綺樹と共にそのまま会社を出てしまったのだから、大変な騒ぎだろう。 少し収集をつけに戻ることにした。 スペインへは今夜出発予定だったから、フェリックスにも電話をしておかなくては。 しかしなぜこうも綺樹に追い討ちを次々とかけるのだろう。 さやかは嘆息した。