「口説かれたのか?」
涼は嫌な顔をした。
「違うだろ。
どっちかというと、あなたの今夜の相手はこいつかという好奇心だ」
綺樹は少し首を傾げて、グラスに口をつける。
「そうか。
男と来たことは無いんだがな」
その言葉で自分の機嫌が直るんだから、現金だよな。
涼はフォークでトマトとモッツァレラを刺して口に入れた。
「早く、ダバリードに戻らないとな。
おまえにも会えないなんて。
よっぽど仕事が立て込んでいるんだろうな。
ただでさえ、和がいて仕事を緩めるべきなのに」
困ったように瞳が陰って、うつむき加減になる。

