綺樹がカウンターの中に居るコックとその妻であろうウェイトレスに軽く挨拶をして、勝手に席に着いた。
通っている感じがあった。
ウェイトレスが水のグラスとメニューを置き、意味深に笑いながら涼を見て行く。
どういう意味か。
今夜はこの男かと思ったのか。
涼はくちびるを結んでメニューを手に取った。
綺樹は相変わらず上の空で、じっとテーブルクロスの柄を凝視している。
何を考え込んでいるのやら。
涼はため息をついてメニューを開いた。
食事だけなんだから、せめて会話をして欲しいんだけどな。
自分の考えに涼は少し動揺する。

