「ええ」 「じゃあ、こっち」 綺樹は背を向けて歩き出した。 肩の辺りまで伸びた髪の毛がゆるやかにカールしている。 単にほったらかしているという感じだ。 涼は思わず髪の毛の一束つまんだ。 「美容院、行ってないの?」 綺樹の瞳に意識が戻った。 「うるさいな」 もの凄く嫌な顔をして、涼の手を叩き払った。 触られたことが嫌なのか、言われたことが嫌なのか。