ひと月。
大学の勉強と仕事があれば、あっという間だ。
だが、綺樹のことを思うと長かった。
会議が終わって、執務室の席についた時。
寝る前のひと時。
声を聞きたくなる。
携帯を手にとるが、絶対にかけることをしていけないのは、わかっていた。
自分に許したのは、東京を発つ前日に、会いに行く日時をメールだけだ。
読んでいるだろうか。
連絡したとおりの時間に、アパートに迎えに行き、インターホンを押す。
ややして綺樹がドアから出てきた。
ちょっとぼんやりした顔だった。
そのまま涼の顔を見る。
「なんでもいい?」
いきなりそれか。

