「あなたは西園寺の当主ですからね。
 私情で動けないところもあるんです」


涼は何も答えなかった。

成介は出て行こうとして思い出したように立ち止まって戻ってきた。

机の上にメモ用紙を置く。


「彼女の新しい携帯の電話番号です」


涼は紙に書かれた数字を凝視する。


「やっていることが支離滅裂じゃないか?」

「いいえ。
 私としては、あなたがきっちりと仕事と、西園寺の務めを果たせていればいいんです。
 あなたは彼女を切れないんでしょ。
 ですけど、彼女はどう転んでも、もうあなたと結婚はしそうに無いですから、愛人にでもしといたらどうですか。
 向こうも寝る相手が一人増えたってどうってことないでしょう。
 その位の関係で、折り合いつけたらどうです」


怒るよりも呆れて成介を見つめた。