綺樹は自分が持っている煙草が短くなり、指に熱を伝えているのに気が付いた。
涼はなんだか話の内容に腹がたって、邪険に言った。
「海に捨てるなよ」
綺樹は素直にくるりと煙草を回転させると、自分の手のひらに入れた。
涼は少なからずぎょっとした。
火が点いているんだろう。
「その腫瘍が分かった時にね。
おまえは言ったんだ」
綺樹はNYの街並みを目を細めるようにして眺めている。
「私から解放されるのは悪くないって」
涼は苦笑している綺樹の横顔をみつめた。
瞳が波打った気がしたが、ふふふと笑い声をあげて綺樹はちらりと涼を見上
げた。
「これが二つ目な」
じゃなくて火の点いた煙草はどうなっているんだ。

