The side of Paradise ”最後に奪う者”


栗色の髪はふんわりとセットされていて、耳元にはダイヤのイヤリングが揺れていた。

長いまつげにほっそりとした鼻すじ、赤いくちびる。

むきだしになった肩に海風は寒そうだった。

涼は無言で視線を綺樹からNYに無理やり移した。

あんな後で、なぜこの女はこんなフランクな振る舞いをするのか。


「悪かったな」


沈黙の後、突然綺樹はそう言った。

涼は奥歯をかみしめた。

一体なんの謝罪だ。

綺樹はボーイが回ってきたのにシャンパングラスを一気に空けると、新しいのを手にした。

涼はそのタイミングで去ろうとした。

そうしないと自分の虚勢が崩れて、足元にでもすがりつきそうだった。

許しを請い、下僕でも構わないと言いかねなかった。