遠くにNYの街並みが見える。
あれがダバリードの本社か。
「おまえも避難しているの?」
その不意打ちの声に背中に力が入った。
無視して去ろうと思った。
でも出来るわけが無くて、引かれるように声のある方へ見上げる。
一つ上の階で、甲板の手すりに両腕でもたれかかっていた。
シャンパングラスと煙草を手にしている。
おかしそうに微笑していた。
無表情でない。
眼差しは純粋に優しい微笑だった。
手すりから離れると、肩をむき出しにしたロングドレスの裾を引きずりながら、階段を降りてきた。
「こっち側からNYを眺めるのもいいな」
隣に立ってそう言う。

