電話が不意に鳴り出した。 慌てて涙を払って、受話器を取った。 「はい?」 「この間はありがとうございました」 聞きなれた日本語に綺樹はもう一度涙を拭った。 「ああ、成介?」 「お風邪、ですか?」 「今、外から戻ってきて、寒暖差でちょっと」 「そちらは寒いですからね」 「東京とは比べ物にもならないさ。 それで? どうかした?」 成介がちょっと躊躇した。