面倒なことに、休職しボストンに引っ越した時、綺樹は携帯を処分した。
もの凄く連絡をつけるのが面倒になった。
固定にかけて留守電にいれたところで無視だろう。
もっとも携帯にかけたって出やしないだろうが。
涼はアパートに直接行くことしか思いつかなかった。
普通は寮生活らしいのに、一人で暮らしているらしい。
ごく普通のアパート。
およそダバリードで億を貰っていたとは思えない生活ぶりだった。
道路で建物を見上げていると、アパートの正面玄関の扉が開いて綺樹が出てきた。
数段の階段を降りる途中で涼は声をかけた。
「ミズウルゴイティ」
足が止まって、涼に顔を向けた。

