「それでも命の心配はしてくださると。
 ありがたいことですね。
 さて、そろそろ下に戻ってきているんじゃないですか。
 成田からこっちに戻ってきた時には、仕事が出来るぐらいまで、修復しておいてくださいよ。
 仕事は山積みなんですから」


綺樹はオッケーと軽く言うとエベレーターに乗った。

1階についてロビーを抜けると、確かに成介の言っていたスポーツカーが横付けされていた。

涼は綺樹がドアを開けても、乗り込んでも、見向きもしなかった。

成田まで一言も口を開かなかった。

綺樹もあえて言葉を出さないほうがいいと思って、無理に会話をしようとはしなかった。

でも運転の様子から落ち着いては、いるらしかった。

出発ロビーに車を横付けする。

綺樹は一つ息を吐いた。


「ありがとう」


それだけ言ってシートベルト外そうとする。

涼の手が重なった。