「なぜ、あいつはそんなに私との関係を戻すことに躍起なのかな?」
成介はおやおやと笑った。
「人はただ生きることなんて出来ませんよ。
誰しも何かを支えや励みにして生きています。
だから彼は、手術を受けることを拒否した。
でもあなたの願いだったから。
“ただどこかで生きていて欲しい”という、あなたのエゴに付き合ったんです。
自分でも直ぐに思い出せると思っていたのかもしれない。
結果は、こんなに愛しているのに一番思い出せない。
思い出してから愛せば良かったのに順序が逆になってしまって、もの凄く苦しんでいる」
成介はしばし言葉を切った。
「反対に僕なんかは思いますけどね。
なぜそんなにあなたは彼を受け入れることを拒否するのかって。
思い出さなくても、これだけ求められれば、彼の趣向は変わらなかったことになるんじゃないですか?
解放だって、もうこの状態で言えますか?
がんじがらめだ」
「だって、タイプじゃないんだもの」
冗談のような口調で言いながら、綺樹は深く考え込んでいた。

