指を伸ばして顔にかかっている髪を取り除きたい。 ゆっくりと頬の線を指で辿りたかった。 そして寝息が漏れているくちびるをなぞりたかった。 いや。 自分のを重ねてその息を吸い込みたかった。 涼は奥歯をかみ締めた。 なぜ手放したんだ。 なぜ離婚したんだよ。 自分を罵るしかない。 針の動く音に時計を見上げた。 行かないと。 本当に行かないと。 今度はいつだ。 次の機会なんて絶望的だ。 携帯が震えた。