The side of Paradise ”最後に奪う者”


ああ、彼女だと思った。

とても無防備な顔だった。

頼りない少女のような。

涼はソファーの足元に座った。

何も気づかずに昏々と眠っている。

起さないと。

手を伸ばしかけて止めた。

起した途端、この人は間違いなく無表情になり、つっけんどんになり、会話が成立せずに部屋を出て行く。

壁掛け時計をちらりと見上げた。

会議まで後20分。

涼は伸ばしかけた手を握りしめ、口にあてると息を吐いた。

5ヶ月ぶりなんだ。

少し長く居させてくれ。

涼は自分のひざに肘をつくと額を支えた。