さやかがなんとなく含みがあった理由はスペインで正月が開けたときにわかった。

3人で暖炉の前でお茶をしていた時だ。

大嫌いなクリスマス社交が終わり、綺樹はやっと気分が楽になっていた。


「綺樹。
 伝えておかなくちゃいけないことがあったわ」


綺樹は嫌な顔をした。

ろくなことがない。


「なに?」

「北野の叔母様、体調が悪いみたい」


綺樹はとまどった。

母親の血のつながらない妹のことだ。


「たぶん、あなたの顔を見たいと思うわ」


綺樹は長く息を吐いた。


「そうかな」


母はとても妹を大切にしていた。

自分の人生を犠牲にし、命を削るほど。

それなのに行かないとなると、母に対して不義理だろう。