「いってぇ……。おい、廊下は走ん、……………」

「す、すいません……」

私が顔を上げると、私の視線の先には、目を見開いている藍さん。

藍さんは、Yシャツをズボンから出して、ボタンを第三まで開けていた。

緑色のネクタイは、ズボンのベルトの所に、チョコンとリボン結びをしていた。

「「…………………」」

藍さん、制服、凄い似合ってます…。やっぱり、王子様みたいです…!

「藍さん、制服、とても似合ってますね」

「……………………」

私が話しかけても、藍さんは反応を返してくれなくて。

「…………………?」

…あ、あれ?……私の制服、どこか変なんでしょうか?

藍さんが、ボーッとしています……。

「………あ、あの?」

「……………あ、あぁ?!な、なんだよ!」

私がボーッとしている藍さんに声をかけると、藍さんは顔を赤くしてそっぽを向いた。

「あ、いえ…、なんかボーッとしていたので…。どうしたのかな、と思いまして」

私は話しながら立ち上がり、スカートをパンパンッと叩く。

「べ…、別に……」

藍さんは、私と視線を合わせずに、髪の毛をグシャグシャにしながら答える。

「……そうですか…?……あ、藍さんもリビングに行かれるんですか?」

「……あぁ、そうだよ」

「…あの、私も一緒に行ってもいいですか?」

「勝手にしろ」

ニコッと微笑みながら、私は藍さんに聞いた。藍さんは、口元を少し緩めながら歩き出す。

「はい…!」

私は、歩き出した藍さんの隣を歩いて、一緒にリビングへ向かった。


「あ、……優さん、藍、おはよう」

「おはようございます!」

「………はよ」

リビングに到着すると、おじさんが優しく笑って挨拶をしてくれた。

リビングには、おじさんと翔君しかいなくて。二人は自分の席に座っていた。

「優さん、制服似合ってるよ」

私が自分の席に座ろうとしたら、おじさんが優しい声で褒めてくれた。

「…ほ、本当ですか?!」

嬉しくて思わず、聞き返してしまう。

「あぁ、優さんにとても似合ってる」

「ありがとうございます…!」

私は、ニコッと笑うと自分の席に座った。

「優、おはよー!」

「おはようございます、翔君」

席につくと、翔君が笑顔で挨拶をしてくれて。私もつられて、笑顔で挨拶を返す。


翔君は、Yシャツを第2ボタンまで開けていた。白いネクタイを、ブレザーのボタンにリボン結び。

急に、翔君が黙ったかと思ったら、翔君はニコニコ笑う。

「…優、制服凄い似合ってるね!可愛いよ!」

「へ?…あ、ありがとうございます……?」

「ううん!だって、本当の事だもん!」

翔君は、屈託のない笑顔で笑った。

おじさん以外には、言われないと思っていたのでビックリしちゃいました。

あ、でも、翔君だったら優しい嘘なのかもしれません……。

「翔、騙されてはダメですよ?…BC優さんが着ている制服が可愛いってだけで、BC優さん本体は可愛くないんですから」

「あ、日向兄ちゃん!」

リビングの扉に背を預け、日向さんが完璧に制服を着こなし、私をチラッと見て微笑んだ。

日向さんは、Yシャツの第三ボタンまで外して肌を露出していた。

チラリと見える色っぽい肌からは、大人の色気、というものが溢れ出ていた。

制服の赤いネクタイは、細い紐じょうで。

日向さんは、赤いネクタイを髪の毛を纏める紐に使っていた。

「翔は、優しいだけですからね。アナタの事なんか、可愛いとか思っていませんからね。安心して下さい」

またまたホワァと、華のオーラを出しながら日向さんは微笑む。

「……で、ですよね………」

そ、そんな事言われなくても、分かってますもん……。私本体が可愛い訳ないですよね……。