目を覚ますと、何故か私は身動きとれなくて。

動こうとしても、何かに身体を締めつけられていて、動けない私はパニックになる。

か、金縛り…?人生初の金縛りですか?!

「…………ん………んん?」

どうにか、顔は動かせるようようで、人の気配がある右隣に視線を向けた。

「ちょっ、え?!…な、なんで翔君がいるんですか?!」

すると、右隣に翔君がいて。

翔君は私の事を抱きしめながら顔を隠すようにして、私の首もとに顔を埋めていた。

…というか、今、何時ですか?!今日から学校ですよね…!?

「優、シィー…。今、お父さんから逃げてるの!ちょっと、かくまって!」

翔君は大声を出した私を人差し指を口元に持って行き注意する。

「あ…ご、ごめんなさい…」

私は何故、自分が謝らないといけないのか考えながら、小声で翔君に謝る。

「で、お父さんが来ても僕は寝てるって言って!」

翔君は、私にそう頼むと、また私の首もとに顔を埋める。

「わ、分かりましたけど…。一体、なにをして逃げてるんですか?」

「……お父さんがお風呂入ってるときに、着替えを隠して怒られたから、逃げてきた!」

「…な、なにやってるんですか…」

翔君のした子供より子供っぽいイタズラに、私は思わず苦笑いを浮かべた。

「暇だったから!イタズラついでに、暇つぶししようかなって!そしたら、すぐにバレちゃって!」

翔君は、悪気がないのか楽しそうに話していく。

「…そ、そうですか…」

「でも、でも、僕だってそんな悪い事してないよ?ちょっとしたイタズラだもん」

「……………はぁ、そうですか…」

「優、なんか僕の話適当に流してない!?」

「そ、そんな事ないですよ!」

翔君は、私の相槌が気にくわなかったのか、口を尖らせていじける。

「もう、優なんか知らない!僕、出てく!」

「あ、翔君!バレちゃ…」

「…やっと見つけた。翔、ちょっと来なさい。優さん、迷惑かけたろう?…すまんね」

私は、隠れていた事を忘れて部屋から出て行こうとした翔君を引き留めようとしたけど。

時すでに遅し。

翔君が出ようとした時、ちょうどおじさんがノックを軽くしてからドアを開け。

翔君を見つけたと同時に、おじさんは翔君の首根っこを掴んで、どこかへと行ってしまいました。


「……………翔君、なんでニコニコしてたんだろう?」

翔君は、暴れずに、大人しくおじさんに連れてかれていた。

しかも、まさかの満面の笑顔で。

「…不思議…、ですね……。………あ!!今、何時?!」

壁時計に視線を向けて、私は時刻を確認する。

………え、まだ朝の六時前じゃないですか…。

「…翔君、朝から元気ですね……」

私も、見習わないと……。

よし、二度寝をする前に、制服を来て学園に行く準備でもしますか!

私は、クローゼットを開けて、真新しい制服を取り出すと、着替えはじめた。


「よし……、完璧かな…」

紐じょうの白いネクタイに少し苦戦しながらも、私は少し歪な形をしたリボンを作った。

「…制服……、……やっぱり可愛い」

私は、制服を身に包むと鏡の前で変な所がないか確認した。

「……多分、大丈夫…ですよね……?」

私は、最後にもう一度、クルッと鏡の前で回ってから。

少し歪な形のリボンをキツく結ぶ。

ふふ、これから三年間楽しみです!

…友達も沢山作りたいです!

「……あ、もう七時!早くリビングに行かないと!!」

私は、時刻を確認して、慌てて部屋から飛び出て、廊下を走り、リビングへ向かう。

今日から高校生か、とか思ったら口元が緩んでしまいます!

……ていうか!たった一日で制服が出来上がるなんて、凄い!

「…きゃっ………」

頭の中で、ゴチャゴチャ考えながら走っていた私は、角を曲がった時に誰かとぶつかり、そのまま後ろに倒れ込む。