静かな部屋で、翔君がパラッとババを置いた。

「……な、なんで………」

「……ご、ごめんなさい…」

数時間、翔君と戦って。

私が運良く全勝してしまい。

翔君が、凄い落ち込んでしまいました。

「…もしかして…、優って……。…超能力者…?」

翔君が、涙目で私に問いかけた。

「い、いえ!超能力者じゃないですよ!」

私は、手を横にふった。翔君は、まだ納得してないようで、

「じゃ、じゃあ……。…ズルしてるの?」

「カード配ったの翔君ですよ……」

私の言葉に、翔君はガクッと肩を落とした。

「…優の…血…、飲みたかった…」

「…………あはは…」

私が苦笑いを零すと、翔君はバッと顔をあげた。急に真剣な目で見られ、ビクッと身体が震えた。

血…、飲まれるのかな……?

「…僕、潔く諦めるよ!……優、何回勝ったっけ?」

意外な答えに、少し放心状態に陥ってしまう。

「……………へ?……えっと…」

15回なんて言えない………。

「確か、15回位だったよね?」

翔君が、ピッタリと回数を当ててしまい、私は思わず一瞬止まる。

「そ、そうでした…?」

「あれ?18回だっけ?」

何故か、三回も増えてしまった……。

「そ、そんな多くないです!…えっと、えっと…。…あ!四回じゃなかったでしたか?」

5から1を引いてみました!少なすぎず、多すぎずです!

でも、少なかった回数に、翔君は明らかにおかしいと思ったのか、首を傾げた。

「え?そんな少なかった?だって、二時間位してるよ?」

「え?に、20分の間違えじゃないですか?」

私のあまりにも無理矢理すぎた言葉に、翔君がムッ…とした。

「優、バカでしょ。…15回だよ」

翔君は、両手を腰に当てて、プンスカ怒る。そのまま、私にズカズカ近寄る。

「な、なんで………」

や、ヤバいです…。翔君、結構、怒ってます…。

「僕はバカじゃないよ!優の嘘位、見抜けるもん!」

「……ごめんなさい…。…15回だと、多いと思って…」

最終的には、壁に追い込まれてしまう。私は、恐る恐るチラッと上を見て、意外に身長が高い翔君に謝る。

「………べ、別に良いけどさ…」

翔君は、顔を少し赤くすると、私から離れた。

「…あの、でも……。15回は…」

私が、言いづらそうにボソボソと話すと、翔君は私の頭を撫でた。

「期限なしでいいよ。…それに、そう言ったの僕だし。…本当になんでもいいからね」

「………ありがとうございます…」

私がお礼を言うと、翔君は満足そうにニコッと微笑んだ。

「いーえ」

翔君は、クスリと笑う。私もつられて、頬を緩めた。

「翔君は本当に優しいですね」

私がニコッと微笑むと、翔君は首を傾げる。

「ん?……そんなこと無いよ?…今だって、優の事グチャグチャに壊したい、とか思ってるし」

「え?!」

私は、翔君のサラリとした発言に、目を見開く。

「………ふふっ。嘘だよ、半分」

翔君は、そう言うと、散らばっているトランプをまとめて、ケースにいれた。

…嘘…、でも半分……。あれ?これは、どういう意味なんでしょうか………?

「…僕は、まだ理性を抑えられるからね。愛希とか裕とか…だったら、優、半殺しされてるよ」

翔君は、立ち上がるとボーッと立っている私に近づき。

トランプのはいっているケースで私の頭をコツンと叩いた。

「…………………」

やっぱり、姿は人間でも。…中身はヴァンパイアだから…。

その事を忘れていた時に、ふいに言われると…
…、…さすがに……怖い…。

「怖い?」

そんな私を見透かして、翔君は切なく微笑んだ。

「………い、いえ…」

視線も合わせない私を怒りもせずに、翔君はまた優しく頭を撫でてくれた。

「優って嘘つくの下手くそだね。…でも、安心して?…少なくとも、僕は半殺しにはしないから」

「…………………」

「殺されそうになったら、僕が全力で助けてあげる」

翔君は、しゃがんで私と視線を合わせて、優しく両手を握ってくれる。翔君の冷たい手は、何故か私に安心感を与えてくれた。

「………ありがとう…、……ございます…」

「だからさ優。…あまり僕以外に………。ごめん、なんでもないよ。…そろそろ晩ご飯の時間だね。リビングに行こ!」

「………はい!」

翔君は、何かを言いかけたけれど。

途中で言うのを止め、翔君は無理矢理、笑顔を作ると私の手を引っ張って走り出した。