あれ?なんで、私、匍匐前進してるんだっけ?

「どうした?」

「え、いえ。なんでも無いです」

私は、首を傾げながら立ち上がる。その時、グラッと視界が揺れてピンク色の床が近づく。

「きゃぁっ………」

そうだった……。腰…抜けて……。

私が、目をギュッと瞑った時。少し、優しい香りがした。


ドサッと、床に倒れた。

「ぃって…………」

ん?あんまり。というか、痛くない……。

「……………?!」

私が、目を開くと目の前に藍さんの顔があった。


いや、本当に、近くで見れば見るほど格好いい……。

「本当に、危なかっしいな……。腰抜けてるなら、早く言えよ……」

藍さんは、一瞬顔を赤くした。でも、すぐに元の顔に戻る。

藍さんは、私の体を抱き締めて、起き上がらせてから、お姫様抱っこをしてベットに運んでくれた。

「あ、ありがとうございます……」

「本当に………」

藍さんは、グチグチ言いながら、棚から救急箱を取り出す。

そして、ベットの隣にある小さな机に救急箱を置いた。


「ほら、首筋見せろ」

「……は、はい…」

私は、噛まれた所を見せる。藍さんは、綿に消毒液を染み込ませて、優しく噛まれた所を消毒してくれた。

「………………っぅ」

ちょっと、染みる………。

「………大丈夫か?」

「ぜ、全然大丈夫です!!!」

「優って、嘘すぐバレるタイプだろ?」

首筋に、絆創膏を貼りながら藍さんが言った。

「……………え?!なんで、知ってるんですか?!おばさんに、大丈夫って言っても、すぐバレるんですよ!!」

私は、興奮気味に話す。

藍さんは、絆創膏を貼り終わった後、救急箱を棚に閉まった。

「って事は、今のも大丈夫じゃないって事だろ?」

ギクッと、肩があがる。

「い、いえ!こ、これは嘘じゃないです!」

「嘘だろ」

「嘘じゃないです!」

「あのな?もう、バレてるんだから認めろよ。俺に、嘘は通じない。だから、俺の前では嘘つくな」

藍さんが、ちょっと怒った顔して私のオデコを人差し指で、突っついた。

「す、すいません………」

「別に。分かれば良い……。ほら、もうリビングに戻るぞ」

「は、はい!」

藍さんは、私の手を掴んで、私を立たせてくれた。

「腰、大丈夫じゃないよな?」

「ちょっとだけ……」

本当は、立つのも一苦労。

「嘘だな。今、立つのも一苦労だろ」

「うっ…………」

「はぁ……。さっき言ったばかりだろ」


藍さんは、苦笑いしながら、私の事をお姫様抱っこしてくれた。

「………きゃふ」

「暴れると、落ちるからな。リビングまで、ちょっと我慢してろ」

「は、はい………」

私は、大人しく藍さんの腕の中にいた。下から見上げて見る藍さんに、私は少しドキドキしていた。