王神君とちゃんと話せたのは放課後になってすぐの時。

私は、放課後になった合図のチャイムが鳴ると王神君に話しかける。

「王神君!」

「優じゃないか。どうしたのじゃ?」

王神君はカバンを持つ途中で、私が話しかけるとカバンを机の上におろした。

「ノートとっといてくれて、ありがとうございます!」

お礼を言うと私は王神君に頭を下げた。

「…頭を下げる必要はないぞ、…礼には及ばん。ソナタが授業に出られなかったのは、なにか理由でもあったのじゃろ?翔も丁度おらなかったからな」

王神君はそう言うと、頭をあげた私にニコッと微笑んだ。

「……はい…。翔君に謝らないといけない事をしてしまって…。謝りに行ってました…」
 
私は王神君の鋭い質問に苦笑いを浮かべる。

「そうか。…だが、お主が一時限を全部使う程、そんなに悪い事したのか?」

「……実は翔君に大きな声で怒鳴ってしまって…」

「ほう…、優が怒鳴ったのか…」

私の言葉に王神君は、目を見開いて驚いていた。

「はい…」

「意外な所もあるんじゃな」

王神君は頬を緩ませて、ははっ…と少し声を出して笑う。

「うぅ…ぅ……」

恥ずかしくなった私は、顔を両手で隠して俯いた。でも、その間もずっと王神君は笑っていて。

は、恥ずかしいです…。 王神に凄い笑われています…。

「優、そろそろ顔を…」

「……え!?優?…なんで泣いてるの!?……ちょっ…、王神君、優になにしたの!…優?大丈夫?どうしたの?」

王神君が私に話しかける途中で、翔君はそれに被さるような大きな声をあげた。

私が恥ずかしくて顔を隠している姿を、途中で教室に入ってきた翔君は私の姿を見て、泣いていると勘違いをしてしまい。

翔君は王神君に怒ったあと、私の手をゆっくりとほどく。

「………あれ?…泣いてない……?」

泣いていると思っていた翔君は、私の顔を見て、首を傾げた。

「泣いてないですよ…?恥ずかしくて顔を隠していただけで…」

私は翔君に顔を隠していた理由を話す。

すると、翔君は理由を聞いて安心したのか顔の力を緩めて笑う。

「…なんだぁ…。良かった。……あ、王神君ごめんね?僕の勝手な勘違いで怒っちゃって」

翔君は勘違いで王神君に怒ってしまった事を、申し訳無さそうに表情を曇らせて王神君に謝った。

「気にせんでよい。紛らわしい事を優にさせた我も悪いからの」

王神君は翔君に怒られた事をそんなに気にしてなかったらしく、優しい表情で笑って翔君を快く許していた。

「ありがとう、王神君。……あ、そうだった!優!早くしないと!」

翔君は話しながら、カバンを肩に掛けると私の手首を掴んだ。

「……………へ?なんですか?」

「もう迎え来てるから早くいかないと!皆待ってるから!」

それを伝えにきたの忘れてた!と翔君はニコッと笑って言う。

そ、それは大変です!皆さんを待たせてたって事ですよね…。早く行かなきゃです!

「あ、はい!…王神君、また明日です!」

「またね、王神君」

「あぁ、また明日の。優、翔」

王神君に挨拶を返されると、私と翔君は王神君に大きく手を振って、教室から出ると学校前に止まっている車まで走った。