意識を無くしたまま蛍ちゃんがあの世に旅立つのを見届けたのは、お義兄さんと虎太郎、そして私の3人だった。
そこには、1人……千春の姿だけがなかった。
ずいぶんと遅れて到着した千春が対面したのは、もうこの世界からいなくなってしまった蛍ちゃん。
聞けば、千春は彼氏とカラオケに行っていたらしい。
蛍ちゃんが危篤だと知らせるために、虎太郎が必死になって何度も何度も電話していたのに。
でもね、千春。
なかなか電話に出なかったあんたの気持ち、私は分かっているつもり。
もしも私が思春期の真っ盛りであったならば、きっと、あんたと同じような行動を取ったと思うよ。
絶対に認めたくない、大切な人の死――……
いつかは向き合わないといけないことくらい、じゅうぶんに理解している。
だけど。
その一瞬を、認めたくないんだよね。


