お義兄さんから危篤の連絡を受けて、大急ぎで向かった先は、蛍ちゃんの家。
言われた通りにクローゼットから段ボール箱を引っ張り出し、最後の仕上げに取り掛かる。
時間がない。
急いでやれば会話くらいできるかもしれない。
次々とダンボール箱の中に放り込み終えると、蛍ちゃんから受け取ったエンディングノートを食器棚のいちばん下の引き出しに入れる。
「……千春、虎太郎。絶対に見つけてよ。たどり着いてよ」
願いを込めて引き出しを閉めると、私はダンボール箱を抱えて車に乗り込んだ。
そこから向かう先はもちろん、病院。
間に合ってほしい。
どうか、最期に蛍ちゃんと話をさせて。
けれど、そんな私の願いは叶うことはなかった。
私だけじゃない。
お義兄さんも、千春も虎太郎も。
誰も、蛍ちゃんと最期の会話をすることができなかった。


