蛍ちゃんのお見舞いから帰るとき。
“じゃあまた来るから”
“はいはい、お待ちしておりますぞ”
そんな普通の会話が、最期になるような気がして。
今までありがとう、だの。
蛍ちゃんの妹で幸せだった、だのと。
辛気臭い言葉をついつい言ってしまいそうになるけれど。
縁起でもない、と、私は毎回それらの言葉たちをグッと呑み込む。
危篤時の最終処分品だけを残して、蛍ちゃんの私物を処分し終えたその日。
処分完了の報告をしに行った病室で、私は蛍ちゃんから1本の鍵を見せてもらった。
「なんの鍵?」
「これは、トランクルームの鍵。うちの近所にあるじゃない?」
「あぁ……そういえばあったわね。……でもなんで、トランクルーム?」


