“合鍵渡しておこうか?”
“えー、いいよ。姉妹とはいえ、よそ様の家の合鍵を持つなんていやらしいわ。ここに取りに来るから”
そんな会話を、お義兄さんの前で“わざと”した。
私が合鍵を持っていることが分かれば、計画が失敗に終わるかもしれない。
だから、敢えて、私は合鍵を持っていないという嘘を事前にお義兄さんの頭にインプットさせておいた。
蛍ちゃんの着替えも、基本、私が届けた。
家族に怪しまれないように、淡々と進む私物処分。
同時に、スマホの着信音に怯える日々――。
鳴るたびに、躊躇する。
何度か深呼吸してから、スマホの画面を見る。
相手が、蛍ちゃんとは関わりのない仕事関係の人間からだったら、涙が出そうになるほどホッとする。


