――それから、程なくして。
蛍ちゃんのからだに現れた異変は家族の知ることとなり、即入院ということになった。
結果、余命3週間。
私物処分の計画を私に話す前から、蛍ちゃんは自分なりに処分を始めていたんだろう。
驚くほどに蛍ちゃんの私物は少なかった。
お義兄さんが会社に、千春と虎太郎が学校に行っているあいだ。
私は会社のお昼休み、空いた時間を有効に使って、蛍ちゃんの家に忍び込む。
万が一、家族と出くわしたときの言い訳はこうだ。
“蛍ちゃんに頼まれた物を取りに来たの”
物は何だっていい。
適当に目についたものを手にすればいい。
入院してすぐ蛍ちゃんが、お義兄さんの前でわざとらしく根回ししておいてくれた。
“あ、静子。必要な物があったらあんたに取りに行ってもらうから”
私もそれに合わせて、演技した。
“はいはい。パシリってわけですね、お姉さま”


