「では静子さん。私が入院てことになったら頼みますぞ」
「…………」
「私も自分で少しずつ処分していくし、静子にも分かりやすいようにしておくから」
「………ちょっと待って」
一緒に住んでいる家族には極秘の計画。
冷静に考えてみれば、成功するわけがない。
蛍ちゃんの容体が悪化して入院となれば、着替えなんかを持って行かなきゃならない。
不在中、蛍ちゃん恋しさに蛍ちゃんの私物を手に思い出に浸ることもあるかもしれない。
そのときに蛍ちゃんの私物が極端に減っていたら、絶対に気づくわけで。
その疑問をぶつけてみれば、蛍ちゃんはすぐに答えを出してくれた。
「最終的には寝室のクローゼット、靴箱、ドレッサーの引き出しの3ヶ所それぞれにまとめておくから。この3つは家族がいちばん手を出しやすいところ」
……そこまで計画済みだったとは、ある意味頭が下がる。
「で、私が危篤になったら静子は病院には来ないで、この家に直行して残りすべてをダンボール箱に詰めてちょうだい。ダンボール箱は畳んでクローゼットに入れとくから」
「あぁ、なるほどね。蛍ちゃんが危篤になったら……」


