「この先2人が辛くて苦しいできごとにぶつかった時、命だけは大切にしてほしいのよ。私の形見が自分たち自身であることを知れば、何があってもあの子たちは強く生きてくれると思う」
「……それ、蛍ちゃんが言える立場? “命だけは大切にしてほしい”って。そんなこと言うんだったらさ、蛍ちゃんこそ、さっさと病院で……」
あまりにも矛盾した蛍ちゃんに軽く腹が立って反論しようとしたけれど、その言葉は最後まで言うことができなかった。
「……ごめん」
言えない代わりに、謝る。
そんな私を見て、蛍ちゃんは静かに笑みを浮かべる。
……そんな表情、しないでよ。
涙が出そうになるじゃないの。
“さっさと病院で再検査受けて、きちんと治してよ”
“グズグズしているから大ごとになっちゃうんでしょ”
“バカじゃないの?”
暴言にも似た私の胸のつかえは外に出ることすらなく、ずっとずっと奥に無理やりしまいこまれる。


