「そろそろ家族にバレそうなのよね。目に見える症状が出て来てしまったから」
「……それってもう……」
「うん、やばいね。非常に、やばいね」
うんうん、と、大げさに頷く蛍ちゃん。
「もしかしたら私、ある日突然入院! とかになってしまうかもしれないから、この家の合鍵をそなたに授けよう」
「……いや、なんでよ」
「頼みがあるのよ」
ごくりと、思わず生唾を呑みこむ。
いよいよ、来てしまったんだ。
蛍ちゃんの最期の願いを聞き入れるときが。
「この家の家族がみんないない時間……そう、平日の昼間ね。こっそりこの家に来て、私の物を処分してほしいの」
「……処分? なんで……」
「死んだあと私の物がいたるところにあったら、嫌じゃない?」
「嫌だなんて……そんなわけないでしょ。知らない間に勝手に処分された方が嫌だよ」


