Ending Note〜the answer〜



「……俺のばあちゃん、中学生の時に死んだんですよ。それこそ、ガンで」


「えっ……」



何のガンだったか忘れたけど、と言って市瀬は生ビールを一口飲み、再び話し始める。



「抗がん剤を投与する一方で、俺の両親や親戚は必死になって腕のいい医者を探したり、民間療法を調べたりするんです。完治するように、再発しないようにって」


「……それは、ごく当然の感情よね」


「そうです。当時まだ中学生だった俺でさえも、大好きなばあちゃんを死なせたくなくて、ほんと必死でした」



市瀬の頭のなかには当時のことがゆっくりと回想されているんだろう。

遠い目をして、穏やかな表情で淡々と語っている。



「だけど、本人が違ったんです」


「…………?」


「ある日学校帰りに見舞いに来た俺に、ばあちゃんが言ったんです」



“……ごめんね。ばあちゃん、もう、きついよ”



過酷な抗がん剤の副作用。

痛みを抑えるためのモルヒネ。



市瀬のおばあちゃんは、自分のことを“廃人のようだ”とも言ったらしい。