「……あっ、ごめん、あたし、トイレ行かなきゃ!」 梢ちゃんは焦ったように逃げ出し、三枝は未だ声が出せないほど呆然としたままだ。 「……へぇ。“引く引く作戦”ねぇ……」 「あ、いや、ちが、」 「仕事終わったら、じっくり話そうか」 低い声で言う僕に、三枝は涙目になっている。 「……メシでも食いながら」 そんな三枝に、誘いの言葉を付け足すと。 「え?」 三枝はひどく驚いた顔をしたあと、 「はい、行きます! 絶対行きます!」 笑顔で即答してくれた。