「頑張れば頑張るほど無理だからさ、ちょっと引いてるの。わざと素っ気ない態度取ったりー、他の男の子と仲良くしたりー」
「……蛍子。あたし、休憩終わる前にトイレに……」
「そしたらね。栗沢さんったら、なんかこう……揺れているような感じで」
おそらく。
今の三枝はドヤ顔で話しているのだろう。
このドアの向こうに僕がいることすら知らずに。
「蛍子、あとで話そう!」
梢ちゃんの焦っている顔が容易に思い浮かぶ。
つまり。
三枝の素っ気ない態度に胸が痛んだのは、僕が“引く引く作戦”にまんまと嵌ってしまったからなのか。
静かにドアを開けてみれば、そこには驚きのあまり口をぽかんと開けている三枝と、真っ青な表情の梢ちゃん。


