「実はさ、“引く引く作戦”実行中なのだよ、梢ちゃん」
「……え?」
僕が協力を求めた梢ちゃんは、休憩室のこのドアの向こうに僕がいることを知っている。
“もうすぐ蛍子が休憩室に戻って来るんなら、あたしが訊いてみますね? 栗沢さんはどうします? こっそり聞きます? それとも後で、報告しましょうか?”
“いや、ドアの向こうで聞いとく”
“分かりました。じゃあ、とりあえず医務室に隠れていて、蛍子が戻って来たら出て来てください”
「あ、そう……。作戦、なんだ」
「そうなのー。でね、」
「あぁ……っと、その話、仕事終わってからじっくり聞くよ」
「えー? すぐ終わるからいま聞いてよ。まだ時間あるんでしょ?」
「や、そう……だけど……」
“引く引く作戦”?


