それからしばらくは、相変わらず三枝にアピールされ続ける日々が続いたのだが。
夏の繁忙期のある日。
チェックインしたゲストを部屋案内に連れて行ったときに、チップ代わりとして、遊園地のペアのフリーパスポートを頂いた。
「遊園地なんて若い人が行くもんだからね」
そう苦笑いしたゲストは60代くらいのご夫婦だった。
旅先の観光地で買い物をしたときにくじ引きがあったらしく、1等の温泉旅行を狙ったものの、当たったのは3等の遊園地フリーパスポート。
これがチップであるのならば、丁重にお断りするところなのだが。
「ありがとうございます。ぜひ、利用させていただきます」
このご夫婦が使うことのないフリーパスポートを、僕はありがたく頂くことにした。


