……しかし。
本当に口止めしなくてよかったのか?
自分のアパートに帰り着いた僕は、駐車場に止めた車のなかで悶々と考える。
まず、あいつは絶対に、親友の梢ちゃんに報告するだろう。
いや、すでに今このときに報告している真っ最中かもしれない。
……しかも、話をかなり盛って。
で、そのあとは?
梢ちゃんが「絶対に秘密だよ」なんて言って、別の誰かに話す。
そして今度は、その別の誰かが、また別の誰かに「絶対に秘密だよ」と言って話す。
そしてまた………
気づけば僕は、“ひょっとして三枝に気があるんじゃね?”的な視線で見られるってわけか?
「……………」
今から三枝のアパートに戻るのはやっぱり面倒。
かと言って、電話かければ調子に乗って、“こんなにあたしのこと心配して……”なんて、変な方向に暴走してしまいそうだ。
「………めんどくせ」
どっちにしたって面倒だ。
三枝が元気になって出社してきたら、重く釘を刺しておこう。


