「うわ、おかゆ。こんなにいっぱい。お米ならあるのに」
「……おかゆを作る手間が省けていいだろ。すぐ食えるし」
「あぁ、そっか。そうですよね。……ありがとうございます。あたしのために」
最後の一言がものすごく余計だぞ、三枝。
僕に送り届けられた三枝は、お礼にとコーヒーでも飲んでいかないかと言ったけれど、丁重にお断りした。
レトルト粥食べて、薬飲んで、さっさと寝ろ。
相も変わらず冷たく言った僕に、三枝はにこりと笑った。
アパートを出たところで、僕は、ひとつ重要なことを忘れていたことに気づく。
……今日僕が起こした行動の口止めだ。
“あたしのために”病院に連れて行ってくれて、食べ物まで買ってくれたの。
そんなことを大はしゃぎで言いふらされたら、周囲に疑われてしまうのは間違いない。
だけど、また引き返して、わざわざ口止めしに行くのは面倒で。
僕はそのまま帰ることにした。


