ジャスト10秒。
三枝は約束通り準備を終えた。
ギリギリまで探していたサイフが冷蔵庫の中から出てきたことには、敢えて突っ込まないでおこう。
それから三枝を病院に連れて行き、診察の結果、ただのカゼ。
飲み薬と解熱剤を処方され、僕はまた、三枝のアパートへと車を走らせる。
「……何か食べる物はあるのか?」
「……米があります」
「米だけ?」
「はい。ちょうど買い物に行こうと思っていた矢先に熱出しちゃったんで」
「…………」
もう少しでアパートに着くところだったけれど、方向を変えて、近くのスーパーへと向かう。
三枝を車に残してスーパーに入り、レトルトのおかゆを手当たり次第カゴにボンボン放り込んで、会計。
「いったい何をやってるんだ、俺は」
三枝のために食べ物を買っている自分が悲しい。


