母さんが、そんなふうに思っていたなんて――……
「私とやり合うことで何かを発散できるのなら、私はすべてを受け止めるの。虎太郎は頑張り屋さんで、すごく優しい子だって知っているから」
「そんなの、俺だって知ってるぞ」
また、蘇った。
9歳の僕が恥ずかしげもなく堂々と言い切ったあの言葉。
“母さんは僕が守る!”
母さんの脳裏には、あの頃の僕の姿があって。
いまはとてつもない反抗期だけれど、性根は優しい息子なのだと信じてくれているんだ。
「……………」
水を飲むつもりで来たけれど、僕はそのまま、そろり、そろり、と、静かに歩きながら自分の部屋に戻った。


