「……虎太郎も、立派に成長したよね」
ふふ、と、母さんが笑う。
「小さいときはあなたより私の方にべったりで。千春とケンカすれば、いつも泣いて私にしがみついてきて」
「……そうだな。いつも千春に泣かされていたよな、虎太郎」
そう。
小さい頃の僕はいつも姉ちゃんに泣かされては、母さんに助けを求めていた。
父さんの肩車よりも、母さんと手を繋ぐほうが大好きだった。
「時々、虎太郎のことで思い悩んで、こうやって泣くけどさ、」
……泣く? 母さんが?
僕の前ではあっけらかんとやり過ごしているのに、ほんとうは僕の知らないところで悩んで涙を流していたのか?
「でもね、来るべき年頃に反抗期がちゃんと来て、実のところ安心してるのよ。あぁ、この子はきちんと成長していってるんだなって」


