深夜、ふと目が醒めて、水でも飲もうと2階にある自分の部屋を出てキッチンに向かった。
寝ている家族を起こしてはいけないと気を遣い、そろそろと静かに歩いていると、父さんと母さんの部屋から灯りが漏れていた。
まだ、起きてるのか。
ボソボソと話す声が聞こえる。
いったい何を話しているんだろうと、好奇心から耳を欹てた。
「……俺も今まで黙っていたけど、一度ガツンと言わなきゃな、虎太郎に」
話題の中心人物は、盗み聞きしているこの僕だった。
「ううん、いいのよ。これで」
そう言ったのは、母さん。
僕は一瞬、耳を疑った。
これで、いい?
親に向かってバカとか、クソババァとか言ってる息子なのに?
それとも、あまりにも反抗ばかりする僕のことをもう諦めてしまったのか?


