「で、お母さん、酔っ払いに絡まれたんだけど……覚えてる?」



母さんは何が何でも思い出してほしいようだ。

けれども僕は恥ずかしさのあまり、それでも「覚えていない」と嘘をつく。



「虎太郎ったらね、酔っ払いに立ち向かっていったのよ?」



……あぁ、そうそう。

僕はそのとき自分が言ったセリフまで覚えている。



「“僕のお母さんに何するんだ!”って、すごい顔してねー」


「……そう、だっけ?」



あぁ、もう。

ここでこの話は終わりにしてほしい。



なぜなら。

このあと僕は、母さんに歯の浮くようなことを言ってのけたのだから。



「でね? 虎太郎の気迫に押されて酔っ払いはどっか行っちゃって、お母さんが“ありがとうね”って言ったら、虎太郎……」