「もう、いいから」 そっと、わたしの肩を掴み、抱きしめた。 あの時と同じように、心臓が音を立てた。 「もう、面影なんて捜さなくていいから。 もう、忘れていいんだよ」 太陽が、西に傾き始めた。 どうしろっていうの、忘れられないから苦しいのに。 「もういいんだよ、俺、幸せだったから」 ――――君の傍に、最期までいれたからね。 そうわたしに笑い掛ける。 「もういいよね」