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蛍との電話の後。
数日間藍は根気よく藍は廊下を拭き続けた。
その間も廊下をバタバタとせわしなく駆けていく佳那子を目撃していたが、忙しいんだな、くらいのことしか考えていなかったのだ。
つまり、全く考えていなかった。
それがいけなかったのだろう。
「藍ちゃんっ!」
早朝。
佳那子の大きな声に目を開けば目の前に佳那子の顔があった。
藍は何度か瞬きを繰り返す。
「もう!ボーッとしてないでこれ着て!」
そう言って佳那子はバサッと藍の手に大きな布を落とした。
よくみれば桃色の着物。
藍は寝癖を整えるのも忘れ呆然と佳那子の顔を見る。
「え、何事?」
「入学試験!」
佳那子はそう叫ぶと勢いよく藍の手を引っ張り立ち上がらせた。
入学試験。
まさか私が?
藍が混乱している間にも佳那子はテキパキと着付けを進める。


