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「着きましたよ。」
微睡みに優しい声。
藍は薄く目を開き、自分が車の中にいることを確認する。
いつの間にか眠っていたようだ。
「今何時ですか?」
「朝の7時ですよ。」
運転手のおじさんは優しく答えてくれた。
く、と胸を張ると首や背骨がコキリと鳴る。
やっぱり車での移動は体に痛い。
窓の外を見れば、深い緑に覆われた石畳の階段。
その先に、何か寺がある。
神社と寺の違いが分からない藍には判断しがたいが。
「ここどこ?」
「常寂光寺。」
「……。」
知らない場所だが、寺らしい。
伊勢千秋は呆れたように藍を見た。
「藤原定家ゆかりの寺だよ。」
「あぁ、その人なら知ってる。」
「人を待たせてるから。観光客のフリで行って。」
言われた通り藍は荷物を持って車を出た。
すると車は藍が振り返る間も無く行ってしまった。
小さくなっていく霊柩車。
やはりあの小さな金色の建物は目立つ。


