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うるさいヘリコプターも遠ざかり、先ほど乗っていた霊柩車と違う黒塗りの車に乗り、竹内蛍はぶすっとしていた。
隣には彼の姉である竹内天音が静かにしゃんとして座っている。
彼女は見た目だけで見れば大和撫子を体現したような人だ。
一つだけ、青みがかった瞳は日本女性というよりも西洋のお人形のようだが。
「……蛍。」
「なに。」
竹内蛍は姉のことが苦手だった。
見た目に反してなかなか攻撃的。
静かに怒り、静かに攻撃する、そんな彼女の人間らしくないところ。
怒るんだったら顔を真っ赤にして怒鳴ればいい。
無表情に怒る姉は、なんだか気味が悪い。
生きていないようで。
「有田藍とは、仲がいいの?」
「姉ちゃんには関係ない。」
姉の言葉をピシャリとはねるが、姉の表情は一ミリも変わらない。
「彼女にはもう関わらないほうがいい。」
高校生にもなって姉に友人関係を言われるのは面白くない。
竹内蛍はムスッとしたまま何も言わずヘッドホンをつけようとした。
もちろん、入っているのは曲ではなく自分で録音編集したここ一年間の宇宙天気予報だ。


