不安定。
竹内家に鬼道学園に妖怪。
掴めない関係性の、藍はどこに位置しているのだろうか。
藍の不安に気づいたのか、伊勢千秋はハッと軽く笑い飛ばす。
「不安定っていう意味では君も一緒なんだよ。他人のことを気にする前に、自分のことを何とかしたら?」
嫌味ったらしい伊勢千秋に藍はムッとして言い返す。
「蛍は他人じゃなくて友達だから。」
「彼には竹内天音がいる。でも、君には誰もいない。君が言う、守ってくれていた妖怪だって今はいないんだろう?」
妖怪が、藍を守っていた?
大きく目を見開いた藍に伊勢千秋はギョッとした。
「弓月は、私のことを守ってたの?」
「知らないよ。」
「弓月は私の親代わりで、でも天狗だったの。あと、お風呂のお客さんも、河童とか一つ目小僧とか。」
「だから知らないって。」
顔を引きつらせてから伊勢千秋はプイと前を向いてしまった。
「君、少し寝た方がいいよ。」
その言葉を最後に伊勢千秋は喋らなくなった。
藍はぼんやりと窓の外の暗闇を見る。
そういえば、弓月のことを見える人と見えない人がいる理由を藍が結婚するときに話すと弓月が言っていたのを、今更ながら思い出した。


