不滅の妖怪を御存じ?





「こんな道路のど真ん中で、何の用ですか?」


ツカツカと千秋は竹内天音に近寄りニコリともせずそう言った。
怒ってる、を全身で表現している。

確かに今藍たちがいるのは高速道路で、こんな所でヘリやら銃やらを引き連れてきた竹内天音の行動は迷惑以外の何物でもないだろう。

幸いにも、他の車は一台も走っていないが。


「弟を返してもらいに来たのです。」


竹内天音は淡々とそう言った。

彼女の言葉には何か突き刺すような鋭さがあり、藍も竹内蛍もびくりと震えた。

ス、と彼女が片手を上げれば、何十もの銃口が一斉に伊勢千秋の方を向いた。
あまりに統率がとれていたため、何かのショーを見ているのではないかと勘違いしそうになる。



「やり方が見苦しいです。弟を人質にとるなんて。」


何の感情も見せない竹内天音の青色がかった目は一直線に伊勢千秋に向かっていた。

一方、たくさんの銃を向けられているというのに伊勢千秋は怯まなかった。
フッ、と軽く微笑んで両手を上げる。


「初めに契約を勝手に破棄したのはそちらでしょう?こちらに何の説明もせず、思い通りにならないとこうして武力で制しようとする方がどうかしています。」


ヒヤリと、冷たい空気が流れた。

詳しいことは藍にはよく分からないが、この二人の仲がものすごく悪いことだけは分かる。
二人は数秒無言で見つめあっていた。