『そこの車の中にいる全員、今すぐ出てきてください。30秒経っても出てこなかった場合、問答無用で発砲します。』
女の人の声だった。
藍の隣で竹内蛍がうな垂れて「姉ちゃんの声だ……」と呟いていた。
竹内天音。
つい先日テレビで見た竹内蛍の姉。
日本一金持ちであるらしい竹内家はなかなかバイオレンスなことをするな、と藍は思った。
「行くよ。」
「え?」
あっさりと竹内天音の要求を飲む千秋に藍も竹内蛍も呆然とした。
「まさか竹内家が武装してくるとは思わなかったよ。」
彼のその言葉にひくりと口元をひきつらせた竹内蛍。
言われた通りに外に出てみると、眩いライトに当てられた竹内天音が堂々と立っていた。
橙色の着物に胸元まである黒髪。
眼鏡。
人形のように白い肌。
テレビで見た通りだ。
目だけは竹内蛍に似ている。


