「じゃあ、藍、お前今まで天狗に育てられてきたの?」
「そうなるね。」
藍の言葉に竹内蛍は頭を抱えた。
認めざるを得なくなってきたのだろう。
ガサ、と伊勢千秋が少し動く。
「そろそろ寝るから。」
そう言ってくぁ、と欠伸した伊勢千秋。
藍は伊勢千秋に聞いておきたいことがあったので急いで声をかける。
「待って。これ、どこに向かってるの?」
「鬼道学園総本部。」
「地理的にどこ?」
「京都。」
京都。
藍の頭にはおしろいを塗った舞妓さんの姿が浮かんだ。
「半日くらいかかるだろうから君たちも寝れば?」
伊勢千秋はそれだけ言うと今度こそ本当に目をつぶって寝てしまったようだ。
藍はボンヤリと宙を見つめていた。
京都。
岩手のたいして都会でもない町から、平安京の京都。
隣では竹内蛍もポカンと口を開けていた。


